神奈川県の木のこと。森のこと。vol.1

「平成27年度新たな木材需要創出総合プロジェクト事業」として採択された、湘南ボードの「神奈川県産材ツーバイフォー木材流通体制構築事業」について、綴っていきます。
まず、どうして湘南ボードがこの事業を立ち上げようと思ったのか、きっかけからお話します。
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その背景は、神奈川県内の林業に着目することからスタートしました。
神奈川県内の素材生産量は、21,000㎥(※1)と少ないなか、人工林の蓄積量は11,777,802㎥(※2)、10齢級以上(※3)が全体の約75%を閉めており、木材有効利用が喫緊の課題となっています。
使われないまま増え続ける人工林を活用しようではないか、森を守り、日本の自然を守ることに貢献したい、こどもたちやその次の世代に残そうではないか。
湘南を愛する者たちの熱い想い。これが当事業を立ち上げるきっかけとなりました。
有効活用のひとつとして考えられたのは、“木造住宅を増やす”こと。もちろん、鉛筆にしたり、家具にしたり、木材の有効利用にはいろいろ考えられますが、流通を促すことで、需要が増えるので、何がいいだろう、と考えたとき、住宅が一番に挙ったのです。
神奈川の木材を住宅の建材にする。その可能性について湘南ボードメンバーが知恵をしぼってミーティングを行いました。
データをみてみると、神奈川県の人口は908万人(※4)、防火木造でない木造(以下「木造」という)住宅は約54.2万戸(14.1%)(※5)、また防火木造が135.2万戸あります。神奈川県年間の新築住宅のうち、輸入木材の使用量が100%の木造枠組壁工法(ツーバイフォー工法)による住宅着工数は約8,425戸(※6)で、木造枠組壁工法による住宅の着工割合が、東京都、愛知県に次いで全国第3位を占めています。
その中でも湘南地域での着工件数は郡を抜いていることから、「湘南で、国産材による木造枠組工法住宅の供給が期待できるのではないか?」
そんな一つの仮定が生まれました。
そこで湘南ボードは、平成22年(2010年)から神奈川県内在住の林業家、建築士、建築施工者が参加して、地域森林・林業、木造住宅、まちづくりの連携をはかる活動をスタートさせました。
活動の目的をすこしカタい言葉にまとめると、
「高齢級となった針葉樹(スギ)を産出する南足柄地区(民有林)と、ツーバイフォー工法の木材利用を図る湘南地区(平塚市、藤沢市、茅ヶ崎市、寒川町、大磯町、二宮町およびその周辺地域)との連携による地域循環型の木材流通実現のため、関係者による地域協議会を設置し、地域循環構想の策定、地域循環構想実現に向けた活動を行うこと」
です。
つまり、ひとことで言うところの、「地産地消」です。
農産物や海産物など、地産地消に注目されていますが、まだあまり、「住まい」を地産地消で!という考え方はあまり浸透していません。
家の地産地消。湘南ボードのメンバーは、「地“山”地消」と掛けています。「神奈川県で生まれ育った木を建材にし、家を建てたら、地産地消だ。」「湘南の風に吹かれ、雨にうたれても育ってきた木なら、その地域のことを誰よりも知っているはず。湘南で住む家にうってつけではないか。」
このムーブメントが全国で動くようになったら、やがては日本の森を守る一つの手段にきっとなる。
そう信じて活動を行っています。
(Vol.2へつづく・・・)
※1 農林水産省ホームページ(平成25年 木材受給報告書)より引用
※2 神奈川県ホームページ(平成26年データ)より引用
※3 森林の年齢を5年の幅で括ったもの。人工林は、苗木を植栽した年を1年生とし、1~5年生を1齢級、6~10年生を2齢級と数える。出典:農林水産省Webサイト(http://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/21hakusyo_h/material/m09.html)
※4 平成25年12月1日現在 神奈川県人口統計調査結果
※5 平成25年10月1日現在 神奈川県住宅・土地統計調査
※6 平成26年度 国土交通省住宅着工統計調査報告神奈川県内の農村を除く